横浜ジャズ研 - This is how I feel about jazz

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横浜ジャズ研 研究発表 DJ mix
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横濱ジャズ研
日本ジャズ発祥の地、横浜で開催するクラブジャズイベント。 Quincy Jones先生の名盤、 "This Is How I Feel About Jazz" の問いに対して、 4人の研究員が考えるジャズを 50〜60年代、2000年の生音ジャズを中心にDJで表現します。また横濱ジャズ研ではクラブイベントの新しい試みとして毎回講義を開講。 研究員がマイクを持って、日々の研究成果をテーマに沿って解説します。

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ちょっとおさらい?「大人のための甘いジャズ考察 I」 2008.04.13 Sunday
講義
yokohama1
横濱のみなさん、世界のみなさん、こんばんは。
横濱ジャズ研の安部です。

今夜は2008年2月10日に行われた、春のジャズ研at BarMOVEの、私の講義のおさらいをしちゃいたいと思います。

横濱ジャズ研の名物、DJがマイクをとり、思いのたけを喋くるというこの企画。楽しみにして頂いてる向きも多数見受けられて感謝の念にたえないのですが、毎回ヒートアップする内容に時間が足りないのも実情です。なので、この場を借りて喋り足りないアレコレを。

春のジャズ研講義のテーマは、2月ということもあってバレンタインに絡めて「大人のための甘いジャズ考察 I」。

このテーマで私が最初に浮かんだのは、学生時代に読んだ小説、『国境の南、太陽の西』(1992年 村上春樹著)でした。ベストセラーでしたので読まれた方も多いと思います。ジャズ好きの著者としても知られていますね。

音の出ない媒体である小説に登場するジャズを、あらためてストーリーに沿って聴きなおしてみるとまた違った感慨があるもんです。


本編は、おおまかに、大人の恋の甘さとは空虚なまでの苦味と表裏一体なんだなあ(みつを)といったようなストーリーです。作品中のジャズは、流れる時間軸のせつなさの中にあって時折存在した時代の甘美を演出する役割を担っています。はぁはぁ。

あらすじに関して、特にご興味ある向きは文庫を手にして頂きたいと思いますが、おおまかにロミオとジュリエット的な恋のお話です。シェイクスピアは家柄、出自の違いによって適わなかった恋を描いておりますが、本作品は時間のいたづらによって適わなかった男と女の物語です。早すぎた出会い、と申しましょうか。運命のいたづら、という点では共通していますね。

それでは、実際に物語のなかに出てきた楽曲をご紹介しましょう。

●Pretend
Nat king cole 1953年
natkingcole3

『ナットキングコールはプリテンドを歌っていた。英語の歌詞の意味はもちろん僕らにはまったく理解できなかった。それは僕らにとってはただの呪文のようなものだった。でも僕らはその歌が好きだったし、あまりにも何度も繰り返して聴いたので、始めの部分を口真似で歌うことができた。』

ジャズが時代のポップミュージックだった頃の名演です。音の隙間に余裕があります。現代のポップソングは隙間をもったいないと認識しているようですが、それは誤りの素。

●Robin's Nest
Oscar Peterson 1965年 Girl talk ;verve
girltalk

『彼女は11月の初めの月曜日の夜に、僕の経営するジャズクラブ「ロビンズネスト」のカウンターで、ひとり静かにダイキリを飲んでいた。』

少し前に亡くなったOscar Peterson。ご冥福をお祈りいたします。風貌に似合わず華やかなピアノプレイは女性のファンが多かっただろうなと勝手に思ってます。テレビドラマ「あしたの、喜多善男」の音楽監督を務めた小曽根真の演奏を聴いていると、Oscar Petersonのイディオムがいまだ息づいているのを感じます。

●Corcovado
Oscar Peterson 1964年 We get requests ;verve
oscarpeterson_girltalk

『ピアノトリオが「コルコヴァド」の演奏を終えて、客がぱらぱらと拍手をした。いつもそうなのだが、真夜中に近くなると演奏はだんだんうちとけてきて、親密なものになっていった。ピアニストは曲と曲の合間に赤ワインのグラスを手にし、ベーシストは煙草に火をつけた。』

ご存知、お洒落なラテンテイストのチューン。夕食が終わって、もう一杯お酒にしようか、デザートをとろうか迷ってるときに演奏されたら、お酒を選んじゃうような。

●Star crossed lovers
「Duke Ellington 1957年 Such Sweet Thunder ;Columbia
suchasweetthunder

『ピアノ・トリオがオリジナルのブルースの演奏を終えて、ピアノが『スタークロスト・ラヴァーズ』のイントロを弾き始めた。僕が店にいるとそのピアニストはよくそのバラードを弾いてくれた。僕がその曲を好きなことを知っていたからだ。』

『学生時代にも教科書出版社に勤めていた頃にも、夜になるとデューク・エリントンのLP『サッチ・スウィート・サンダー』に入っている『スタークロスト・ラヴァーズ』のトラックを何度も何度も繰り返して聴いたものだった。そこではジョニー・ホッジスがセンシティヴで品の良いソロを取っていた。その気だるく美しいメロディーを聴いていると、当時のことがいつもいつも僕の頭によみがえってきた。』

ロミオとジュリエットのプロローグに"star-crossed lovers"という言葉があるけれど、まさに星回りが悪くて悲劇に陥った恋人たち、というニュアンスでしょう。

デュークエリントンとビリーストレイホーンは1957年にオンタリオのシェイクスピアフェスティバルで演奏するためにこの曲を含んだ組曲を作り、オリジナルの演奏ではジョニーホッジスのアルトがジュリエットを、ポールゴンザルヴェスのテナーがロミオ役を演奏しました。

今回紹介する盤の中でも、私はこれが一番好き。Duke Ellingtonならではの妖しいボイシングにねちっこいアルト、なのにメロディはこの上なく美しいバランス感覚。本盤に収録されている他のトラックも斬新なエッセンスがたっぷり。John coltraneとの競演盤でクラブジャズリスナーにも有名な「In a Sentimental Mood」がありますが、あの繰り返しを多用したイントロと同様、ジャズが理論でなく会話であることを改めて実感させてくれる名盤です。


●As time goes by
casablanca

『僕はバンドの休憩時間にピアニストのところに行って、もうこれから『スタークロスト・ラヴァーズ』は弾かなくていいよと言った。
「それなんだか『カサブランカ』みてえだよ、旦那」と彼は言った。 「確かに」と僕は言った。
それ以来、彼は僕の顔を見るとときどき冗談で『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』を弾いた。』

カサブランカでサムを演じたドゥーリイ・ウィルソンはピアノが弾けなかったため、彼が劇中で弾く主題曲『As Time Goes
By(時のたつまま)』はスタジオ・ミュージシャンのエリオット・カーペンターによって吹き替えられる。この曲はこの作品のために書き下ろされたものではなく、31年のブロードウェイ・レヴュー『Everybody's
Welcome』のために作曲されたもの。


最後に、本文ラストより引用をして〆たいと思います。

『みんないろんな生き方をする。いろんな死に方をする。でもそれはたいしたことじゃないんだ。あとには砂漠だけが残るんだ。』

『僕はその暗闇の中で、海に降る雨のことを思った。広大な海に、誰に知られることもなく密やかに降る雨のことを思った。雨は音もなく海面を叩き、それは魚たちにさえ知られることはなかった。
誰かがやってきて、背中にそっと手を置くまで、僕はずっとそんな海のことを考えていた。』

ううむ、ニヒルですね。こういう気分で聴くジャズもまた善し。横濱でジャズを聴くっていうのは、そういうことなのかもしれませんよ。


大人のための甘いジャズ、がテーマでしたが、ちょっと刹那な締めになってしまいましたね。でもまあ、「大人の」甘さということは、それは苦みがつきものなのでありますからして。

ご精読ありがとうございました。次回もお楽しみに!
| 安部心 | comments(1) | trackbacks(0) |
Comment








う〜む、、、
わたしももうかれこれン10年前、友達に借りて読みました。
全体的な印象しかおぼえていませんが、上記の「海に降る雨」の一節は、今でもはっきりおぼえてます。
なんてなんて、孤独なイメージなんだろう、と、胸が締め付けられたものでしたよ。

<現代のポップソングは隙間をもったいないと認識しているようですが、それは誤りの素。

いいこと言いますね〜!!!共感です!!
posted by sayaka | 2008/04/20 2:25 AM |
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